妥協婚 3
彼氏を恨めしく思っていた女の頭の中では、
(あいつも一緒に崖下に落ちたんだから、恐らくこの辺りで彷徨ってるはずよ。
見つけたら引っ叩いてやるわ)
と、文句が右往左往しながら渦巻いていました。
女は頭の中でも思考をウロウロさせながら、
時々トンネル付近をウロウロしていました。
いつか彼氏を探し出して、力の限り罵倒するつもりなのです。
怒りも抱いている一方で、そんな理由で徘徊している惨めな自分を
自覚していないわけではありません。
独りぼっちで醜い衝動にかられた自分を、
恥ずかしいと思う気持ちを抱いているのです。
ですが、人間の性と言うべきでしょうか、女はその羞恥を認めたくはありません。