妥協婚 4
化けとなった今は誰かと関わることもないのですから、恥も外聞もないのです。
どんなに恥ずべき事でも、微塵も気にせずお化けとして生きていけば良いのですが、
生きていた時と同様に、人目が気になるのが人間と言うものです。
自分を客観的に見ようとしてしまう人間としての癖、人間の性。
その誰もが持っているものを所持したまま、この女も異世界にやってきました。
他の人から見たら、今の私は憎悪を引きずる惨憺たる汚泥に見えるのだろう、
と思ってしまうのです。
孤独なアタシ。
彷徨うアタシ。
広葉樹に包まれたこの美しい山林における一点のくすみ、
それがアタシ。
周囲には誰もいないのですが、
そんな風に一人ぼっちでいるのは周囲の目には惨めだと見える、
と思ってしまったその女は、
最近流行りの一人キャンプをしているのだという体で過ごすことにしました。