古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

それはそれでしあわせ

昔々あるところに、旅をしている中年男がいました。

独身のその男は、同じく独身の知人の壮年男を誘い、二人旅をしていました。

幼い頃見たテレビアニメの主人公に憧れて、車に荷物を詰め込んでの

行き先があるような、ないような旅です。

 

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ルパン三世

なぜ中年男が独身なのかは、時を更に遡ります。

 

中年男が14歳の時、大したことのない男の子でしたが、彼は好きな女の子が何人も

いました。周囲の男の子たちから人気がある女の子は大概好きでした。

自分の好みがまだわからない少年は、周りの声に流されていました。

評判の良い女の子が、いい子なんだと思い込んでいたためです。

評判がよくて人気のある女の子たちと仲良くなりたかったのですが、如何せん

大したことのない少年は全く相手にされませんでした。

 

 

中年男が20歳代になったころには、それなりにはなっていました。女の子から

もてたくてそれなりに努力をしたからです。その頃には好みのタイプを自覚

するようになり、スレンダーで、クールビューティ的な子に惹かれていました。

まともな結果は出していないのに、

「誰からも綺麗だといわれる女の子もいいけど、俺的にはこうだな」といった

好みの女性に関しての持論まで振り回し始めました。

 

人気があって競争率の高い女の子を狙わず、仲良くなれそうな子にアプローチ

するという方策の結果、10代の頃よりは女性と仲良くは出来てきました。

しかし25歳、26歳、28歳と時間が過ぎていきましたが、なかなか身を固める

までには至りませんでした。同年代の人の結婚報告が相次ぎ、焦燥感もあります。

取り残されてはいけないと思い、30歳を過ぎからは将来の伴侶探しに力を

注ぎましたが、実りのないまま3年ほど過ぎてしましました。

 

その頃ようやく気付きました。

「自分の好みの女性ばかり追いかけているから上手くいかないのではないか?」

「自分は大したことないのに、女性には容姿を求めているからだろうな」

と反省しました。また

「もしかしたら、今まで出会った人の中に僕のことを良いと思ってくれていた人が

いたかもしれない。気づかなかっただけかもしれない。女性からアプローチを

受けたことはないが、そういう人がいてもおかしくはないはず、蓼食う虫も

好き好きって言うし」

「僕のことを、良いと思ってくれる人を探そう。そんな人なら性格がいいはず。

女性の見た目を重視するのはもう止めだ。内面だよこれからの時代は」

 

と謎の論理を展開して、決意を新たに素敵な女性との出会いを求め活動を始めました。

せっかくなのでその男の門出を祝しまして、名前を鉄郎とします。

 

しかし鉄郎には何も実りませんでした。

30代半ばになれば、たくさんの女性がすでに結婚をしています。

もし独身なら鉄郎のことを「この人ならまぁまぁ良いかも」と思ってくれた

かもしれない女性は、みんな結婚してしまっていました。

 

鉄郎は手遅れでした。後悔先に立たず。

 

そして趣味に走るようになり、ルパン三世の映画の真似事なんかをする

中年になりました。

 

古今東西老若男子なんてこんなものです。でも

本人が、それでよければ、それでよし。