古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

妥協婚 4

化けとなった今は誰かと関わることもないのですから、恥も外聞もないのです。 どんなに恥ずべき事でも、微塵も気にせずお化けとして生きていけば良いのですが、 生きていた時と同様に、人目が気になるのが人間と言うものです。 自分を客観的に見ようとしてし…

妥協婚 3

彼氏を恨めしく思っていた女の頭の中では、 (あいつも一緒に崖下に落ちたんだから、恐らくこの辺りで彷徨ってるはずよ。 見つけたら引っ叩いてやるわ) と、文句が右往左往しながら渦巻いていました。 女は頭の中でも思考をウロウロさせながら、 時々トンネ…

妥協婚 2 

雨のサタデーナイトにトンネルを歩く一人の女がいました。 傘も雨具も何も持たず、サンダルは片方のみしか履いていませんし、 ワンピース赤い色が無造作に飛び散っています。 散らかった髪の毛で顔の半分は覆われ、額からは赤いものが流れていて、 誰が見て…

妥協婚 1

昔々あるところにお化けが出るという噂のトンネルがありました。 峠に隔たれた二つの町、ハ町とオ町は「ハ町-オ町道(はまち-おまちどう)」 という道で結ばれていて、そのトンネルは峠の一番高いところにあります。 ハ町から峠道を上っていくと、眺めの良…

それは悪いソバだった 23

その後ずいぶん時が経ち、世の中のことを知ったソバオは思いました。 わざわざソバになることもなかったのかもしれないな・・・ 小麦として人生を全うして中力粉となったとしても、 蕎麦粉と混ざって二八蕎麦の「二」の方になれたかもしれないし。 そういう…

それは悪いソバだった 22

「そっかぁ。でさ、烏丸はなぜ僕に逢引のことを知らせたんだい? 烏丸にはメリットなんて無いのに」 「そう、メリットは何も無いわね。 ただ、逢引されているかもしれないソバオを、見過ごせなかっただけよ」 「そうだったんだ。助かったよ、烏丸。ありがと…

それは悪いソバだった 21

「あれは作り話だったのか・・・それなら赤ちゃんの両親はともにソバ。 となればソバエットも僕も完全にソバ。 ってことは僕が勝手に遺伝子がどうのなんて仮定して、 それを元に話をしていたのか。間抜けだなぁ僕は。 ん?じゃあなんで赤ちゃんは悪魔の実に…

それは悪いソバだった 20

「ふ~ん、そうだったんだ。・・・あっ、聞きたいことがあったんだ。 烏丸、君はなぜ悪魔の実の話をしたんだい? あんなことを話せば僕が、⦅ソバエットと小麦との逢引⦆という誤った疑い をかけるじゃないか」 「それが目的だよ。疑惑の相手が誰であろうが…

それは悪いソバだった 19

数日後、ソバオのところに烏丸が来ました。 「噂でいろいろ聞いたよ。ソバオ、君は元は小麦だったんだね」 「実はそうなんだ。小麦だったんだけど、ソバになりたくてここに来たんだよ。 それより僕はショックだったよ。逢引する人がいるなんて」 「そういう…

それは悪いソバだった 18

ソバエットは沈黙したままでした。 それは答えでした。 化けの皮が剥がれたソバエットは沈黙の後、顔に悔しさを滲ませながら 「時が経てば誰でも変わるじゃない。それのどこが悪いのよ」 と開き直りました。 ソバオは優しく言いました。 「逢引の事実はすぐ…

それは悪いソバだった 17

ソバオは、新しい朝の新しい空気をいっぱい吸ったところで ゆっくりとソバエットに尋ねました。 「で、赤ちゃんの父親はいったい誰なんだい? 赤ちゃんはソバの実と悪魔の実、二種類生まれた。烏丸によると、 それはソバと小麦の掛け合わせで生まれるという…

それは悪いソバだった 16

「そんなこと気にしないでゴゥドン。よして、ねっ、顔を上げて、 もう謝らないで。 あの時は悲しかったけど、ソバオとしてのあなたから優しさを沢山貰ったわ。 もう悲しみなんてないのよ。お互いの昔の名前で呼び合えるんだから、 こんなに幸せなことってな…

それは悪いソバだった 15

「ヒャムギーナ・・君なのかい!? ・・・・・僕はゴゥドンだ。匹国の、小麦のゴゥドン・・・」 「!!」 「僕も今まで黙っていた。僕こそ隠していて・・・すまなかった」 「本当にゴゥドンなの・・・」 「ゴードンでもゴウドンでもない。二文字目は小さいゥ…

それは悪いソバだった 14

「実は話があるの。今話してもいいかしら?」 ソバエットが静かに言いました。 「うん。・・・どうしたんだい?」ソバオは何かを感じながらも 普段通りに答えました。 「実は・・・私、昔は小麦だったの」 「何だって!?」 「私はここから遠く離れた所で小…

それは悪いソバだった 13

その日の静かな夜にソバオは考えていました。 (烏丸の言っていたことが本当なら・・・ 悪魔の実は、ソバと小麦の子ということになる。 それならソバエットと、どこかの小麦との間に生まれたということ・・・。 彼女は誰かと逢引してたのか? でもこの村には…

それは悪いソバだった 12

悪魔の実がどこかに消えてから数日後、 ソバオたちのところに烏丸 黒子(からすま くろこ)がやって来ました。 ソバオはこの間の恐ろしい出来事について話しました。そして 「暴君はどこかへ行ったのでホッとしているよ」と安堵の表情を見せました。 「そう…

それは悪いソバだった 11

拷問は仕上げに入ります。 彼らを待ち受けているのは釜茹での刑です。 グツグツと煮立った熱湯の中にバラまかれ、地獄に来たかのような 苦しい思いをしました。そんな中で彼らは、悪いことをした自分と決別して、 まっとうな人生を歩みたいと思うようになり…

それは悪いソバだった 10

拷問はまだ続きます。 包丁がやって来て細く切り刻まれました。 切られる図 彼らはバラバラになりながら思いました。 これは何かの罰なのかと。 そう考え始めた彼らは、 今まで自分がしてきたことを振り返ってみました。 偉そうにしていた自分・・ 暴力で周…

それは悪いソバだった 9

悪魔の実たちはどうなったかというと・・・ 「ソバが大収穫だぞ」 大きな手の主はソバの実を収穫して喜んでいました。 悪魔の実はソバオよりずいぶん大きいのですが、 悪魔の実よりずっと大きな手の主にとっては、ただのソバの実です。 その実で蕎麦を打とう…

それは悪いソバだった 8

しかし楽しい日々に変化が起きました。 と赤ちゃんのなかのいくつかが、体も態度も大きくなってきて 傍若無人になってきたのです。 そしてそれらは日を追うごとに凶悪になり、 ソバの実と言うより、もはや悪魔の実でした。 恐ろしい悪魔たちは偉そうに、好き…

それは悪いソバだった 7

ある日、こっちの方に蜂の蜂須賀蜜郎(はちすか みつろう)と 蜂谷ハニ一(はちや はにかず)がやってきました。 「僕は蜂須賀。君の名前は何だい?」と蜂須賀が尋ねます。 「ソバオっていうんだ」とソバオ。 「イタリア風の名前だね。あっちの方にもイタリ…

それは悪いソバだった 6

ソバたちと一緒に暮らしていたソバオ(旧ゴゥドン)は不思議なことに、 徐々にソバらしくなっていきました。 ソバたちは成長し、もうすっかり自分の根で歩けるようになりました。 ある日、その辺のソバが言いました。 「ねえ、ソバオは最初に会った時とは随…

それは悪いソバだった 5

そしてソバ会議の始まりです。 「ソバスチャンなんてどうかな?」 「えーっ、ありきたりすぎるよぉ」 「ソバノルド・ソバルツネッガーの方がかっこいいって」 「そんな早口言葉言えないよ」 「マイケル・ジャクソバっ!」 「だめよ、そんなの」 「じゃあセト…

それは悪いソバだった 4

ゴゥドンが来てから数日後、辺りからソバたちが芽を出し始めました。 ゴゥドンが来たときは土の中にいた種が眠りから覚めたので、 周りは沢山のソバになりました。 ソバが「君の名前は何ていうの?」と尋ねました。 ゴゥドンは「僕の名前はゴ・・」といった…

それは悪いソバだった 3

ゴゥドンはセトーチ海峡を渡る船に乗り、木州の港に着きました。 「ソバ畑を知らないかい?」と、その辺いたハトに聞いたら、 「東に行くとソバの国・新州(しんしゅう)があるポッポ」とハトは 教えてくれました。 楽をしたいゴゥドンは、その辺のトラック…

それは悪いソバだった 2

そんなゴゥドンでしたがある日、この村を出てソバになることを決心しました。 そのためにはフィアンセのヒャムギーナとお別れをしなければなしません。 彼女は、加賀輪(かがわ)バクーガーとメリケン子の一人娘です。 バクーガーはドイツの白ビールに、メリ…

それは悪いソバだった 1

昔々、匹国島 ( ひきこくじま ) というところに 佐貫(さぬき)ゴゥドンという若い小麦が住んでいました。 匹国島の周囲はセトーチ海峡があり、 海峡の先には東から北にかけて木州(きしゅう)、 西には旧州(きゅうしゅう)という島があります。 ゴゥドンは…

連鎖が止まるとき

昔々あるところに、どこにでもいる普通の顔をした人がいました。 ある日その人は刀を差していたので、自分の前にいる人を刺しました。 刺された人は有り触れた顔の人でした。その人は刺されたことが悔しくて、 自分の前にいる人を刺しました。 刺された2人…

使うほどに疲弊

昔々あるところにタワシでゴシゴシしている人がいました。その人はふと思いました。 (タワシって細いヒゲのようなものが沢山集まって塊になり、酷使されていると。 ワタシのいる世の中でも同じようなものだなと) はぶらし はぶらし 拡大 その人はタワシに…

代理戦争

昔々、スコップ達とツルハシ達がいました。彼らは嘆いていました。。 最近道具を手荒に扱う人々が増えてきた、と。 道具を大切にしない奴らには使われたくない、とも願っていました。そこで彼らは、 スコップ達vsツルハシ達というケンカをしてみたらいいん…