それは悪いソバだった 14
「実は話があるの。今話してもいいかしら?」
ソバエットが静かに言いました。
「うん。・・・どうしたんだい?」ソバオは何かを感じながらも
普段通りに答えました。
「実は・・・私、昔は小麦だったの」
「何だって!?」
「私はここから遠く離れた所で小麦として生まれたの。
でも色々あってソバになり、今まで普通のソバとして暮らしてきた・・・
赤ちゃんが悪魔の実になった原因は私だと思う。
恐らく私は完全なソバにはなれていなくて、私の体には
小麦の遺伝子が残っていた。だからソバのあなたと小麦の私の赤ちゃんが、
悪魔の実になっってしまった・・・黙っててごめんなさい」
「・・・」
「それで、その色々というのは・・・小麦だった頃に住んでいた村に、
将来を約束した小麦がいたの。でもその彼はソバになりたいと言って
村を出たわ。私は本当に辛くて苦しかった。
その村に住むのが嫌になったし、自分が何か悪いことをしたから
彼が去っていったのかと考えたり、自分が自分でいるのも嫌だった。
そして私はそのまま生きていくのは辛すぎて、・・・
それで悩んだ末、私もソバになろうと決心した。
私がソバになったとしても彼に再会できるわけでもないし、
目的もない、行く当てもない。それでもソバになることにしたの。
私は村を出てゆく当てのない旅をして、流れるようにここにたどり着いた。
ソバの国のこの地で暮らしていくうちに、いつの間にか
本当のソバのようになっていった。そしてあなたと出会った。
そんな過去があるのを恥じていたから今まで言えなかった・・。
昔私は匹国島というところにいて、ヒャムギーナという名前だったの」