古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

ねこねこほいほい

 

昔々あるところに悪さばかりするネコがいました。

外に干してある洗濯物に飛びついて汚したり、

縁側の干し柿をちょろまかしたりして好き勝手に暮らしていました。

そのためその村に住んでいる人々はいつも困っていました。

尾戸 小太郎(おと こたろう)という男もそんなネコに困っていましたが、

ある日ホームセンターで良さそうなもの買ってきました。

良さそうなものというのは、「ねこねこほいほい」という名の植物です。

これを屋外に置いておくと、ネコが嫌がって近づかない

という効果があるそうなのです。

さらに不思議なところがあり、近所にネコが暮らしていると

すくすく生長するのですが、

ネコがいなくなると途端に枯れてしまうというのです。

尾戸は(こりゃいいや)と心中で感嘆し、衝動買いの後、

ウキウキで帰宅したのでした。

尾戸は少し大きな鉢に土を入れて種をまきました。

 

すぐに芽を出したねこねこほいほいは、すくすく生長していきました。

ということは近所にネコがいる証拠です。

ネコは相も変わらず、尾戸や近所に住む人たちに悪さをしていました。

(ねこねこほいほいを置いたのに、ネコはまだまだ悪さをしている。

本当に効果があるのだろうか?)

尾戸の不満と不信の日々は続きました。

 

その後もねこねこほいほいはぐんぐん生長しました。

 

ある日の朝、ねこねこほいほいの姿はいつも通りでしたが、

良い香りがしてきました。

ただし人間には感じない香りでしたので、

尾戸はいつも通り仕事へ向かいました。

昼頃になり香りに誘われたネコがやってきました。

「なんだか美味い物がありそうだに」と言って、

ねこねこほいほいの鉢までやって来ました。

でもごちそうはありません。

「食べ物がないってことは、きっとこの土の中に埋まっているんだに」と言って

ネコは鉢を前足で一かきしました。

 

 

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ねこ、鉢を覗く

 

 

すると不思議なことに鉢の中の土は一瞬ですべて消えて、

ネコの眼下には地下へ向かう空洞が現れました。

鉢の内側が深い井戸のように変わり、

本来の鉢の底よりもっともっと深く地中に向かって空洞は続いています。

ねこねこほいほいの根っこは空洞の底に向かって延々と伸びています。

ネコは驚いて固まってしまいましたが

「これはなんだに?」と言って不思議な空洞をのぞき込みました。

その時、ねこねこほいほいの蔓が静かに動き出し、ネコのお尻を押しました。

ネコは空洞の底向かって落ちていきました。

 

夕方帰宅した尾戸は、枯れているねこねこほいほいに気づき、

その姿を見て(この近所からネコがいなくなったんだな)と思いました。

ようやく安心して生活が出来そうです。

尾戸は庭の端の腐葉土置き場へ鉢を持って行きました。

そして「ご苦労さん」とねこねこほいほいにをねぎらい、

土と共に地面に置きました。

さっきまで鉢が置いてあった地面には、

もちろん、空洞なんかありませんでした。