パンを丸ごと
昔々あるところに男の子がいました。その子が住む家には小さい池があり、金魚が飼わ
れていました。男の子は金魚にパンを与えようと思い、時々池にパンを投げてやってい
ました。とても優しい男の子なのです。
ある日、その優しさがあふれ出しました。
「パンを一斤丸ごとあげたら、金魚はよろこぶだろうなぁ」と思った男の子は、お母さ
んが買ってきたばかりのおいしいブレッドを池に放り込みました。
男の子は満足でした。とても良いことをしたと思いました。
しばらくして、近所の集会所での寄合が終わり帰宅したお母さんに、
男の子は得意そうに自分の善行を話しました。
そうしたらお母さんは
「なんてこった、この子は!せっかくのパンを捨てしまったのかい!」と
烈火のごとく怒ってまるで山姥のようでした。というより怒らなくても、
普段から山姥のような顔をしているお母さんでした。
男の子は自分のしたことを反省しました。
どんなことでもやりすぎはよくないいんだなぁ、と。
それと、なんで父ちゃんは山姥と結婚したんだろう・・・と疑問でした。
そして池の中の金魚はというと、
「パンをまるごとなんて、食いにくいじゃねーか。あのガキ使えねーな。」
と思いました。
古今東西、老若男子のすることなんて、だいたいこんなものです。