古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

昔々、とある時、神が天から降りてきて浜辺に来ました。

夏のヴァカンスに来ていた人々、特に若き女性は突然のご降臨に色めき立ち、

黄色い歓声の嵐でした。

神様もご満悦です。

そこで神はしばらく海水浴に興じることにしました。

 

ひとしきり目の保養をした時に、神はもよおしてきました。

天界を出る前に用を済ませてくればよかったと思いましたが、ここは海。

体内の水分を放出するには申し分のない環境です。

Water in water~水を隠すなら大海~

・・・バレやしない。躊躇いはありません。

 

(天界に居る我の体内の水はいわば上水。水は下へと流れるのが摂理。下界に流して

下水となること、これすなわち自然)と詭弁ともとれる自己肯定を盾に排水しました。

解放感、そして背徳感・・・スウィート&スパイスのシナジーによる非日常体験。

 

(まさか神がこんなことをしているなんて、だれも思うまい)と、

ほくそ笑んだその時、

 

「景気がいいですなぁ、神様。」と下の方から声がしました。そしてゆっくりと

浮かんでくるタコ。その顔は明かなる含み笑いを携えていました。

 

(!!バレている?)神は内心動揺しましたが、顔は平静を装い言いました。

「おぉタコか、今日も平和でいい日じゃのう。お主は最近どうじゃ?」と。

 

「いやぁくたびれますよ。体にガタがきてましてね。あっしはタコという仕事に

かれこれ10年以上従事してますがね、結構厳しんですわ。

海ってのは自由に見えて、その実、暮らすにはしんどいことばかりですよ。

エサをとるのも一筋縄じゃぁいきませんしね、

襲われることだって日常茶飯事ですわ。

人間のようにヴァカンスなんてできゃしませんよ」と、

神に対しては随分と偉そうに答えました。そして続けて

「それで最近ねぇ、陸で暮らしたいなんて思うようになってきたんですわ。

それに、できればそうだなぁ、食べ物の心配もなく、襲われることもなく、

のんびりと暮らしたいんですよ・・・神様。」と、眼光鋭く言いました。

 

神はタコの言わんとすることを推し量りながら、顔は変えずに言いました。

「そうか。でもタコは海で暮らすのが普通じゃろうて。

その体は陸では暮らせん。海は良いところじゃて、

そんなこと言わずここで天命を全うしてみようではないか」と。

 

タコは神に向かってさらに高圧的な態度で言いました。

「いやぁ辛抱たまらんです。神様の力で何とかしてもらえませんかねえ?

あっしはこの通り体が柔らかいのが自慢なんですよぉ。柔らかいまんま、陸で

生きられる体に作り変えてくだせぇ。しかも今までにない新しい動物がいいですわ。

ついでに楽に生活したいんですよ。そこんとこよろしく頼んますわ。」

 

タコは神に声を出させる隙は与えず、薄ら笑いを浮かべながら

次々と言葉を撃ち込んできました。

 

「天下の神様が、海の中であんなことするなんてねぇ」

「女子が知ったらどう思うでしょうねぇ?」

「どうしましょうかねぇ?」

「あっしは忘れることもできますよ。ヘヘッ、むろん神様しだいですけどねぇ・・・」

獲物を見据えたタコの目は凶器。冷徹なる44口径マグナム。

たとえ神でも逃げられない。

 

 

(・・・人生終わった。おしっこしたの完全にバレてる・・・)神は諦めました。

 

そこでタコの要求を飲むことにしました。

神様はタコの体を陸上での暮らしに合わせて変化させ、

今までにない新種の動物として作り変えました。

体は柔らかいまま、自分でエサを探さずに済む、楽な生活も保障しました。

ついでにパートナーも要求されたので、不承不承手ごろなタコを捕まえて、

それも変身させ、二匹のタコを陸上にある裕福な人の家に運びました。

 

それが飼いネコの始まりのようです。

その頃はネコという動物がいなかったので、ネコの始祖となりました。

そのネコの子孫は増え、中には野生化するネコもいて、それらは

体が大きくなり力もつけたり、足が速くなったりしました。

それがライオンや」チーターの始まりだったようです。

 

 

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一応、蛸