古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

ひょうたん

昔々あるところで、カボチャとキュウリが喧嘩をしていました。

カボチャは「この武骨な丸さこそが瓜の生き様だぜよ」と主張し、

キュウリは「いやいや、細長さこそが瓜としての売りでぃ」と

言い張っていました。

どっちが瓜としてふさわしいかという、とるに足らない口喧嘩です。

 

そこにまん丸の代表格のスイカが通りかかり、ガボチャの味方をしました。

夏季限定とはいえ老若男女から愛される瓜界のクイーン・スイカと、

ご婦人方ご用達・瓜界でのホクホクキング・カボチャがタッグを組んだので、

キュウリは窮地に陥りました。

 

しかしその時、ゴーヤーとヘチマの凸凹コンビがやってきました。

三人の諍いを聞いた細長い二人はキュウリの味方をしました。

すると状況は一気に変わります。

ゴーヤーの苦みを効かせた睨みは、表面のトゲトゲと相まって、

そこはかとない鋭さで丸みの二人を襲います。

しかもヘチマはヘチマ水を出したり、中身はタワシとして使われたり、

古来よりご婦人方からの美容に重宝された実績のある曲者です。

このヘチマの変則攻撃は丸みの二人には奇襲攻撃となり、

細長い軍は盛り返してきました。

 

そこへメロンが通りかかりました。名実とも瓜界のプリンスです。

いうまでもなく丸み二人につきました。この甘み三重奏は鉄壁です。

生れながらの上流階級、幼き頃より英才教育を受け、

帝王学の真髄が心身にしみ込んだ

完全無欠のメロン、そんな彼に付け入る隙は無し。

 

両陣営のパワーバランスは拮抗してきました。

 

そこへひょうたんが通りかかりました。

その姿を見た6人の瓜たちは動きが止まりました。

ひょうたんのプロポーションに圧倒されたからです。

つの丸みが上と下のダブル、そして二つの丸みに挟まれた

細く美しい・くびれ。

 

驚愕のスタイルを目の当たりにした6人はすっかり戦意を失いました。

自分たちのなんてありふれた形の、凡人だと気付かされました。

そして喧嘩をしていた自分たちの愚かさを恥じたのでした。

 

ひょうたんは彼らには一瞥もせず、通り過ぎていきました。

 

「なんか、ごめんね」

「いやぁ、こちらこそ。悪かったよ」

「あんなきれいなひとがいるんだね」

「僕は一目でファンになっちゃったよ」

「えっ?実は僕もだよ」

「ひょっとして、みんな思っていることは同じじゃない?」

 

6人の瓜たちは仲直りをして、ひょうたんに憧れる同志として仲良くなりました。

 

 

 

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ひょうたん