古今東西よくある話、十番煎じの童話集

小学4年生からの読み物

数字

昔々、数字たちが暮らしている街がありました。

「2」がいたり「557」がいたり、「九十八」がいたり「76・236」など

とにかくいろんなのがいました。中には紛らわしいのもいて、

「1.0」と「10」なんかは小数点を見落とされたり、

「888888688」と「888888888」は見た目はほぼ同じなので

同一人物だと間違われたりしていました。

 

その街の三叉路を「七(しち)」が歩いていました。三叉路の交点へ向かっていた

「七」は、三叉路の別の道から歩いてこちらに向かってくる人がいることに気が

付きました。他のもう一つの道からも人が近づいてきました。

三叉路の交点に向かって、三方向の道からそれぞれ一人ずつ歩いてきて、交点で

かち合うタイミングでした。

「七」はそれぞれの人の顔を見て、おやっと思いました。二人の顔が「七」なのです。

世の中に似ている人は三人いるといわれていますが、その三人が偶然にも、

今出会おうとしているところです。他の「七」達も気づきました。

そしてまさに交点で三人の「七」は揃いました。

 

三人の「七」は驚きましたが、お互いに目を合わせてそして笑いました。さらに

この偶然に歓喜しました。俺たちは起こしたぞ、スリーセブン!!

 

その時、道に面した書店から人が二人出てきました。それを見た三人の「七」は

フリーズしました。その人は二人とも「七」だったのです。

その二人もフリーズしました。けどお互いに声を掛け合いました。

「あなた方は一体?!なぜ 七 が三人も揃っているのですか?」

「そちらの方こそ、七 が二人一緒にいるとは・・・」

「私たちは双子なんですよ。で、皆さんはどういったご関係で?」

「いやぁ~、我々は偶然にもここで遭遇しただけなんですよ。いや遭遇というよりも、

邂逅といった方がいいようですな」

「そうですね。五人の 七 がそろうなんて信じられない幸運ですよ」

 

などと話している五人の横を、一台のタクシーが通り過ぎ、少し行ったところで

止まりました。そして一人の人が降りて、訝しみながら、しかし確実に五人の方に

向かって歩いてきます。五人はみんな顎が外れそうな顔をしましたが、すぐに

相好を崩しました。なんと六人目が現れました。

 

そして六人目は興奮ぎみに言いました。

「こっ、これはどういう事ですか?タクシーの車内から見えたときは自分の目を

疑いましたよ!でも明らかに自分と同じ 七がこんなにもいるんですから」

 

五人は経緯を話しました。そしてせっかくだからということで、

「近くのファミレスなんていかかですか。ほらあそこ、ジョナナサンがありますよ」

ということで、六人はお茶をしばくことにしました。

 

ジョナナサンに入りみんなそれぞれ好みのものを注文しました。

「いやあ、便利になりましたな。このタブレットで注文できるなんて」

「全くです。あたしなんて、今日初めて触りましたよ」

などと話しているうちにウエイターが注文の品を運んできました。

 

「お待たせいたしました、こちらご注・・えっ!!」と突然大きな声を

あげました。それを聞いた六人はウエイターの顔を見ました。

 

まさかの七人目でした。

 

全員の息が止まりました。七人の「七」がそろう確率など、小数点以下を

いくら使っても表せないほどの、 ぐ・う・ぜ・ん。

 

しかし全員笑顔が溢れました。六人は喜び勇んで写真を撮り始めました。

「七人の七」なんて奇跡は今しかありません。中にはSNSにアップした人も

いました。ひとしきり写真を撮った後、ウエイターは言いました。

「あたしはあと15分ほどで今日のバイトが終わるんですよ。そのあと皆さんの

お仲間に入れていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろん!!!!!!」六人の「七」は声をそろえて言いました。

 

そして15分後、七人の 七 の出会いを祝し、改めて茶話会が始まりました。

それは二時間ほど続き、そしてお開きとなりました。七達がジョナナサンから

出たとき、少し離れたところから「おぉ~い」と呼びかけられました。

 

まさかの八人目!

 

陽気な八人目は猛ダッシュでやって来て、息を切らせながら言いました。

「間に合って良かったぁ~。何とか会えましたよぉ」

七人は新しい「七」が現れても、驚かなくなっていました。

心の底からの喜びだけでした。

「なぜここにいらっしゃったんです?」と八人目に問いかけました。

 

「いやね、僕の友人が皆さんの中のどなたかのSNSを見たんですよ。

それで僕に教えてくれたんです、七 が七人いるよって。

でその写真のウエイターさんのエプロンに見覚えがあって、あっこれは家の近所の

ジョナナサンだって。それで慌てて来たんですよ」

 

「そうだったんですか。わざわざありがとうございます。我々は今、茶話会が

丁度終わったところなのですが、せっかくだからどうでしょう、記念に皆で

何かしてみませんか?」と七人の中の誰かが言いました。

 

「いいですね!ぜひ!あっそうだ。この近くに広場があるので、そこでマイムマイム

でも踊りませんか?」と八人目が言いました。

その提案に全員賛成でした。

 

八人の「七」は広場へ行き、円を作るよう八方に並びました。そして

マイムマイムを歌い始め、くるくると円が回るようにロールしながら踊りました。

 

 

 

f:id:monokuroten59:20210305220339j:plain

ハッポウシチロール